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令和7年度 函館市病院事業運営方針について | 2025年4月21日 |
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令和7年度を迎え、病院事業を取り巻く経営環境は、自治体病院・民間病院・大学病院を問わず、非常に厳しいものとなっています。これは日本経済の停滞を反映したものであり、世界情勢からもこの状況は今後も続く可能性が高いと考えています。 そこで、これまでの医療保険制度の変遷と病院事業の現状を説明し、今後の運営方針について皆様と共有したいと思います。 厳しい経営環境の背景日本の戦後の高度経済成長は1970年代以降に鈍化し、1990年代以降は停滞期に突入しました。しかし、歳出は増大し続け、国債残高は増え続けています。これは、政治家だけの責任ではなく、私たち国民全体の問題でもあります。医療においては、国民皆保険制度の下、公助と共助によって医療費が賄われてきました。しかし高齢化による医療費増大は、健康保険制度改革、介護保険制度導入、後期高齢者医療制度導入などを経てもなお、自助努力が必要な状況にまで至っています。 一方、医療機関数はコンビニエンスストアの2倍にものぼり、過剰な状況です。急性期病院は、人材・薬剤・医療材料・エネルギーを多く必要とし、医療従事者の偏在や不足、働き方改革による時間外労働規制も重なり、経営を圧迫しています。輸入に頼る薬剤や医療機器の高騰、エネルギー費や食料費の高騰も追い打ちをかけています。全国自治体病院協議会によると、令和6年度は急性期病院の平均赤字率は-7%である一方、入院施設のない診療所は+10%の黒字となっており、アンバランスな状態です。 函館市病院事業の現状と課題函館市病院事業は、市立函館病院、市立函館恵山病院、市立函館南茅部病院、市立函館病院高等看護学院を運営しています。平成18年からは地方公営企業法を全面適用し、事業管理者を置いています。私が事業管理者に就任した平成30年当時は、累積資金の赤字が32億円で経営健全化指標である資金不足比率が18.3%となり、レッドカードの経営健全化団体となる20%に迫る危機的状況でした。しかし、職員一丸となった経営改善努力により、令和5年まで6年間連続で単年度黒字を達成、累積資金も黒字の50億円に転じ、全国の自治体病院の中でも経営状態が良い病院となりました。 しかし、近年の急激な経費増大により、再び厳しい状況に直面しています。診療報酬改定への期待も、現状の経済状況では難しいと予想されます。 今後の運営方針病院事業とくに市立函館病院のような超急性期病院は、人件費と設備投資に多額の固定費が必要な労働力集約型事業であり、さらに薬剤・医療材料費などの変動費も必要な資本集約型事業の構造となっています。この状況下での病院事業維持のため、以下の対策を講じます。1)固定費削減: 人件費:物価高騰の中、職員の生活を守るため、人件費の削減は最終手段とします。しかし、年間8億円に及ぶ時間外労働の費用については、内容を精査の上、IT化などによる効率化、不必要な労働の削減、タスクシフト・シェアなどにより適正化を目指します。 設備投資:医療機器の導入は必要性を厳格に審査し、機能が同じであれば低価格機種の選択、複数診療科での共用などにより利用率を推進します。 2)変動費削減: 診療経費:医療の質と安全を確保しつつ、検査・治療・ケアの必要性を再検討し、薬剤・医療材料のコスト削減に努めます。「Less is More」は薬品も医療も多ければ良いわけでなく害を及ぼすことが多くなるとの概念ですが、過剰な医療行為を避け、適切なタイミングで的確な医療を提供を心がけるようにします。費用対効果の高い手術法を選択し、治療成績の維持とコスト削減の両立を目指します。 請求漏れ防止:適切な診療報酬請求のため、担当者への教育と体制強化を行います。現在、経費削減ワーキンググループを立ち上げ、現場からの意見を反映した改善策を推進しています。 職員の皆様へ市立函館病院は、道南の医療を支える重要な役割を担っています。今後の地域医療再編を見据え、病院の強化は不可欠です。職員の皆様には、現状を理解し、患者の治療成績維持、業務の効率化・省力化、医療安全、働き方改革に協力をお願いします。共にこの難局を乗り越え、地域医療を守り抜いていきましょう。 |
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函館市公営企業管理者 病院局長 氏家良人 |
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