院長あいさつ

 2025年は当院にとって大変意義深い年です。基坂から港町に移ってきて25年。今ではびっくりする程、病院周辺は活気に満ちています。ショッピングモールが隣にでき、まばらだった住宅街も隙間がなくなりました。裏手にある五稜郭駅の向かいにはお洒落なお店が軒を連ねています。

 勿論病院自体もそれに負けないくらい発展を遂げました。ざっと挙げてみてもゲノム医療、ロボット手術、TAVI、無痛分娩などなど。多方面に渡って進歩を遂げてきました。しかし残念ながらここで全ては紹介できません。もしご興味があればこのホームページの他のページも覗いてみてください。色々な発見があるでしょう。

 さらにもう一つ2025年が節目の年となるのがドクターヘリです。早いもので運航開始以来もう10年です。初フライトは2015年2月18日。当日は森町消防本部の要請で、函館空港を午前11時19分に離陸し、現場到着が午前11時30分でした。同44分に離陸して、当院に着いたのが午前11時55分。圧倒的なスピードです。それから10年間。4000回以上ものドクターヘリ搬送を行いました。現在、ドクターヘリの格納庫は函館空港内にありますが、利便性を増すため近々、当院の近くに新しい格納庫を作る予定です。新たな旅だちです。

 ところで少し話は変わりますが、医療界で密かにテクノロジー改革が行われていることを皆さんはご存でしょうか?

 テクノロジーと言うと何か「思いやり、暖かさ、人間らしさ」とはかけ離れた言葉のように聞こえるかもしれません。でも実際は真逆です。病院の仕事は皆さんが想像する以上に機械的な業務が多く、ここに取られる人手は非常に大きなものがあります。従ってこの業務をテクノロジーが肩代わりしてくれると、我々、職員はより多くの時間、患者さんと向き合うことができます。言い換えると、より「思いやりと暖かさを持ち、人間味のある」医療が行えるようになります。

 今後の日本は労働人口が減少し、また医療者の大都会志向から函館でもこれまでの様に職員数を確保できなくなるかもしれません。しかしそう言った場合でも、ロボットなどのテクノロジーは確実にその足りない部分を補ってくれます。当院を受診された患者さんならもう検体を運ぶロボットが院内を移動する姿をご覧になられたでしょう。このように当院は今、新たな技術革新の真っ只中にいます。

 当院は北海道一の歴史を誇る老舗病院で、この道南の地に160年以上もの間、存続してきました。
「老舗とは様々に変わりゆく時代の声を聞き、そしてそれに柔軟に対応してきたからこそ生き残ることができたのだ」という記事を目にしたことがあります。まさにその通りだと思います。

 我々は老舗としての真価を発揮しながらこれからもこの地で皆さんと共に歩んでゆく覚悟です。

2025年8月
病院長 森下 清文