病理診断科

　病理診断科は、病理診断・細胞診断業務を行う診療科であり、各診療科で採取された組織検体および細胞診検体の組織学的・細胞学的診断を行います。

　病理診断科では、病理研究検査センター所属の臨床検査技師、細胞検査士とともに、病理専門医・分子病理専門医・細胞診専門医のスタッフ1名が業務にあたっています。

　病理診断科で行う業務は以下の通りです。

1. 組織検査

　組織診断は、生検や手術で採取された組織から病理組織標本を作製し、顕微鏡で観察して診断します。通常はホルマリン固定された標本からパラフィンブロックを作製し、組織を薄切しスライドガラスに張り付けたのち染色して顕微鏡で観察します。通常のHE（ヘマトキシリン・エオジン）染色標本や、ときに抗体を用いて特定の物質を染色する免疫染色標本を用いて行います。

　手術中に腫瘤の組織型や断端の検査、リンパ節転移の有無などを調べる迅速組織診は固定しない生の検体を凍結して行います。最近では、特定の物質に作用する分子標的薬が有効かどうかを判断するコンパニオン診断が行われており、これも免疫染色や組織検体を用いた遺伝子検査で行います。

　また、癌の患者さんに標準治療が効かなかった場合、治験を行っている新薬が使えるかを調べるがん遺伝子パネル検査もパラフィンブロックの組織（あるいは血液検体）で行います。病理診断は病理専門医が行いますが、難解な症例は専門家にコンサルテーションを行っています。

2. 細胞診

　細胞診は、子宮頚癌スクリーニングのための子宮頸部擦過細胞診で始まりましたが、現在では、尿、体腔液をはじめとして気管支擦過細胞診、喀痰細胞診、舌擦過細胞診や乳腺、甲状腺、唾液腺、リンパ節、膵臓などからの穿刺吸引細胞診が行われています。日本臨床細胞学会認定の細胞検査士と細胞診専門医が協力して診断にあたっています。

3. 剖検

　病理の業務の1つに剖検（病理解剖）があります。剖検は、臨床医の懸命の治療努力にも関わらず亡くなった患者さんのご遺体を解剖し、死因の検索、病気の進展や治療効果の判定などを行う業務です。肉眼所見に加えて各臓器の検織所見も勘案し総合的に病態を診断します。剖検結果は臨床医にフィードバックされ、将来の医療に役立てられるとともに、CPC（臨床病理検討会）を開催することにより臨床研修医の教育にも役立てられます。

実績

実積症例数	2021年度	2022年度	2023年度
組織件数	4,434	4,556	4,550
細胞診件数	3,867	3,852	3,707
剖検数	13	8	6
院外組織件数	187	142	148

業績

論文

1. 棟方 哲：III. 卵管腫瘍　7.漿液性卵管上皮内癌 (STIC)。　産と婦　特集：これでわかる婦人科稀少腫瘍　88(2):186-192, 2021.
2. Munakata S , Kushibiki H, Akimoto T, Yamashita T, Shimoyama N: A case of endometrial carcinosarcoma containing sertoliform. endometrioid carcinoma component. Case Rep Pathol Volume 2021, Article ID 5868818, 9 pages, https://doi.org/10.1155/2021/5868818
3. Munakata S, Yamamoto T. Application of immunocytochemical and molecular analysis of six genes in liquid-based endometrial cytology. Diagn Cytopathol 2022;50(1):8-17.
4. Munakata S. (Timely review) Diagnostic value of endometrial cytology and related technology. Diagn Cytopathol 2022

学会発表

1. 棟方 哲、佐々木 伸也、高瀬 未穂、山内 里紗、鈴木 雄策、茂山 かおり、岡村 友香里、山本 敏也、櫛引 英恵、下山 則彦：横浜システムにおけるATECの診断精度向上のための遺伝子診断の応用。　第59回臨床細胞学会秋期大会　シンポジウム9 (パシフィコ横浜　ノース)。2020年11月21日 (web)
2. 棟方 哲、櫛引 英恵、下山 則彦、秋元 大志、山下 剛：Sertoliform endometrioid carcinomaの成分を有した子宮内膜癌肉腫の1例。　第110回日本病理学会総会。2021年4月22日 – 6月28日 (on demand)
3. 櫛引 英恵、棟方 哲、下山 則彦：MSI-High判定で加療後、Microsatellite stable腫瘍の存在が剖検で判明した胃癌多発転移の一例。　第110回日本病理学会総会。2021年4月22日 – 6月28日 (on demand)

学術講演

1. 棟方 哲：子宮内膜病変 up-to-date。2020年第80回細胞検査士教育セミナー(大阪、web)。2020年10月19日 – 11月8日 (web)
2. 棟方 哲：子宮頸部腺型病変のWHO2020における改訂などについて。第82回細胞検査士ワークショップ。2021年7月30日 – 8月9日 (web)

スタッフ紹介